作家紹介

益子・成井窯

手に持った時のどっしり感、まあるく手に馴染む形。
素朴でおおらかな日々の器。

成井窯 (2)

益子の目抜き通りを曲がり、軽自動車でも狭く不安になる道を上がって行く。
車を止めて木々が生い茂る小道を下った先に、風の吹き抜ける心地良い場所がある。
季節の色が鮮やかで、虫や鳥の声が気持ちよく響いている。
映画の舞台みたいな工房と、景色の主人公である力強い登り窯。
暮らしも仕事もひと繋がりで、どこを切り取っても飾らない格好良さが感じられる。

成井窯は成井さんご夫妻と妹さんの3人で作陶している窯元です。
師でもあった先代の意志を継ぎ、昔ながらの蹴り轆轤を使い、薪を割り、火入れから4日ほどかけて3室の登り窯で焼き上げていきます。

無理に形にするのではなく、ひとつひとつ出来たなりの形を大切にしているという成井窯の器たち。
だからこそ一つ一つに個性があり、おおらかで自然体でありながらも強さが感じられる。
また登り窯ならではの、炎による釉薬の変化も楽しみのひとつ。

なので一つとして同じものがない。
重ねやすさや使い勝手を考えたらちょっと不便もあるかもしれない。
それでも、それさえも愛おしく、日々手に取り使う器です。
渋くて味わい深い色味の器は、日々の飾らない食事をそっと引き立ててくれます。

また、様々な表情の花器たちも魅力的です。
野の花をそっと挿せるミニ一輪挿しから、どっしりとした安定感抜群の大ぶりの花器たち。
素朴な花器ですが、色が加わった途端見事に、主役の花たちを引き立ててくれます。 花を生けるたびに、心の奥から喜びが湧き出てきます。

窯出しのお知らせをいただいて、益子へ向かいます。
細い小道を通り抜ける時、毎回わくわくします。
変わらぬ景色と、時間の流れに心が満たされます。
季節ごとの風や声をききながら、じっくりじっくり手にとって選ばせていただきます。 こうしてささやかな会話を交わし、顔と顔のお付き合いをさせていただけることは私たちにとってとても大切なことです。